ai_math_runningのブログ

最近はAI関係の記事が多い予定です。一応G検定持ってる程度の知識はあります。

DXには2つの方向性があり、それは基本的に異なる方向のものだが、しばしば混同される

DX、相変わらずブームですね。
japan.zdnet.com
こんな記事にもあるように、大企業のトップも様々なDXへの取り組みを語っていたりします。
ただ、DXが何を意味するかについては、あいまいだな、と思ってしまいます。

どうして、世の中で語られるDXというのが、こんな漠然としてしまっているか。
私が思うのは、タイトルにも書いた通り、
DXと言う名の元に、2つの全く異なる方向性のものが一緒くたにされていて、それが混同されているがために、ややこしい事になっているのではないだろうか。

という事で、今回はその辺りを整理する話を書こうと思います。

DXに含まれる2つの異なる方向のものとは

DXには2つの方向があると思います。それは、

  1. コンピュータを使って従来のタスクを自動化したり省力化したりする事
  2. 数学的な解析・計算を行い、それを意思決定に役立てる事

この2つは、基本的には異なる方向のもので、必要なものやスキルも全然違っているのですが、「コンピュータを使う」という事のみで強引に結び付けられてしまったのがDXなんだと思います。

まず、この2つの方向について簡単に説明します。

コンピュータを使って従来のタスクを自動化したり省力化したりする事

1つ目の方は、割とイメージしやすいのではないかと思いますが、ちょっとした例を挙げてみましょう。
個人事業主でBtoBで仕事をしている人にとって、請求書を書くというのは、絶対に必要ではありますが、それなりに面倒な業務ではあると思います。
人によっては、月末に丸一日かけて請求書作成の作業をまとめてやる人もいる事でしょう。
この請求書作成の作業を自動化したり省力化してくれるソフトがあったなら、その時間に別の仕事をする事もでき、より儲ける事ができるでしょう。
これが、1つ目の「コンピューターを使った従来タスクの自動化・省力化」です。

数学的な解析・計算を行い、それを意思決定に役立てる事

こちらの方も、簡単な例を挙げてみます。

車で移動する時、目的地によっては、高速道路を使った方がずっと速く付く事があると思います。
また、高速道路を使うと信号で止まる事がないため、ガソリンの使用量も減る事になります。
しかし、高速道路の使用には、当然の事ながら、高速料金がかかります。
なので、贅沢して高速道路を使うか、節約して使わないか、迷う事も多いかもしれません。

その時に、高速道路を使う事で、時間がどれだけ節約できるか、
また、使うガソリンの量もどの程度変わってくるか、を調べてあげると、
ガソリン代の違いや節約できた時間を高速料金を定量的に比較する事ができます。
例えば高速料金が1500円で、ガソリン代が700円くらい違ってきた場合、かかるお金が高速道路を使った方が800円多い事になります。
一方、高速料金を使うと1時間速く着くなら、高速を使って余分にかかる800円で、その1時間を買ったと考える事ができます。
それが高いと思うか、安いと思うかは、個人の価値判断によるでしょうが、漠然と迷っていた時よりは、明確な根拠の元に意思決定ができると思います。
これは、「数学的な計算を意思決定に役立てた」事になると思います。

両者が混同されたがための悲劇

ここまでの説明で、DXに含まれる2つの方向は、基本的に異なるものだと言うのが理解できると思います。
なので、2つの方向は、必要なスキルもツールも異なります。

「自動化・省力化」の方は、自動化や省力化のツールが必要であり、必要なスキルは、ツールについての知識やノウハウだったりプログラミングの能力だったりするでしょう。
ちょっと前に流行った「Power Automate Desktop」だったり、今注目されているChatGPTなどの生成AIも、こちらの方向で役立てる事を期待されているでしょう。

一方、「数学的解析」の方で必要なスキルは、プログラミングよりも、数学についての深い理解の方が重要だったりします*1。必要なツールも、ChatGPTは信頼性が低いので使用は推奨されず、データ分析専用のソフトなどを使う方が良いでしょう。Excelでもある程度の解析はできますが、専用のソフトの方が、より多くのことがやりやすいはずです。
(BIツールというのは、基本的にはデータ分析ツールだと思います。使った事はありませんが。)

しかし、両者が混同されていると、
自動化が期待されている場面で、人材に機械学習やデータ分析の研修を行なったり、
数学的な解析が必要なのに、自動化のツールを揃えたりしてしまったりします。
特に、人材スキルのミスマッチは、担当者にとって大きな悲劇となってしまいます。
また、片方が得意な人間に、両方をやる事を期待してしまう事も多そうです。

なので、DXというときには、この2つの方向がある事を理解し、両者をしっかりと区別する事が重要ではないかと思います。
個人的には、2つの方向それぞれに新しい言葉を割り当ててあげた方が、誤解が少ないのではないかと思っています。

*1:プログラミングもできるに越した事はないですが。特に機械学習ディープラーニングをやるにはpythonが必須だったりしますし。