ai_math_runningのブログ

最近はAI関係の記事が多い予定です。一応G検定持ってる程度の知識はあります。

シンギュラリティってそんなお手軽なものじゃない

ChatGPTやGPT-4が大きく話題となっていて、それについて様々な記事が、はてなブックマークでもホットエントリーになっていたりしています。
そんな中で、シンギュラリティだ、なんて事も言われ出しているようですね。
例えば。
qiita.com

しかし、GPT-4の登場で、これは単なる一過性のAIブームでは無く、シンギュラリティの始まりだと確信するようになりました。

いやいや、シンギュラリティって、そんなお手軽なものじゃないですよ。
ちょっと凄いAIが出てきたら、すぐにシンギュラリティとか言って騒ぎ出すの、この界隈の悪い癖ですよ。
落ち着いてください。

ホントは、シンギュラリティについては、ある程度いろいろな事を論じてから書こうと思っていたのですが、
シンギュラリティとか言って騒ぎ出す人がたくさん出ないように、シンギュラリティについて順を追って説明していきますね。

そもそのシンギュラリティとは何か?

シンギュラリティとは「特異点」を意味する英語で、AI界隈では「AIが自律的により知能の高いAIを生み出す状態」を指します。そうなると、AIが勝手にどんどん進歩をして人間には止められなくなる、とされていて、その時点を「特異点」と見做しているという事です。

ただ、少なくとも現時点で開発されたり検討されたりしているAIの延長線上にあるとは考えられていません。なので、現状でシンギュラリティを喧伝するのは荒唐無稽なものと言えますし、シンギュラリティの話題は穏当に言ってもSFレベルの絵空事、というのが正しい認識だと思います。

人間の知能を超えるって何?

で、「プレ・シンギュラリティ」とか言うんですか(苦笑)、そのシンギュラリティの前に「AIが1人の人間の知能を超える時代」が来るそうなんですが、ちょっと冷静になって考えてもらいたいんですよね。
そもそも「AIが人間の知能を超える」って、どういう意味なのか、という事です。

ChatGPTだGPT-4だ、ディープラーニングだ、とかが出てくる以前から、電卓より計算の得意な人はどれだけいたでしょうか。
計算力という点では、随分前にコンピュータは人間の能力をはるかに上回っていたと言えるでしょう。
(ちなみに、今のパソコンは1秒間に30億ステップの処理を行う事ができるそうです。それがどれだけとんでもない処理能力なのかは、想像できますでしょうか。というかスマホでも15億ステップとか20億ステップとか、だそうですよ。)
もっと言うと、紙に書くより記憶力が高い人だって、いない訳じゃないですか。記憶力という点では、人間は紙にだって劣っているんです。
でも、だからって、紙は人間より知能が高い、なんて言わないでしょう。
そして、コンピュータも、人間ではまずできない量の計算をしてくれるのですが、それをもって、人間より知能が高いとはならない訳です。というのは、紙もコンピュータもあくまで道具だから。
その道具の進化によって、人間が記憶しておけないほどの情報を手元に蓄えておけるようになりましたし、人手では絶対にできない程の膨大な計算を行う事で、様々な分野の技術が飛躍的に進歩しました。
基本的に、AIの進歩は、その道具の進化の延長線上にあるものです。例えば、将棋AIは、将棋でより勝ちやすい手を計算する方法が分かってきた、という事なんです。

大規模言語モデルは何が画期的なのか?

そして、今、話題になっている、GPT-4などの大規模言語モデルも、その延長線上にあるものです。
もちろん、大きなブレークスルーです。それは、これまでコンピュータが扱うのが難しかった自然言語(人間が普段使う言語)をかなり正確に扱えるようになった事です。
人間が行なっている仕事には、言葉を使って行うものがたくさんあるので、コンピュータで人間の言葉が正確に扱えると、言葉を使った仕事でコンピュータの膨大な計算処理能力を使う事ができるようになる事が期待されます。ひょっとすると、かなり沢山の仕事で、人間がやるよりも速く大量にやれるようになるかもしれません。
ただ、それはあくまで「道具としての進化」であって、それをもって、人間より賢くなった、というのは違うでしょう。

そもそもコンピュータは元々ものすごい勢いで進化し続けてきていた

ただ、それでもショックを受けている人が多いのは、そもそも今のコンピュータの凄さを知らなかった人が多いんじゃないかな、と思う訳です。
コンピュータは、ここ数十年間、ずっとものすごい勢いで進化し続けてきました。
その結果、普通の個人が持っているパソコンやスマホでも、1秒間に10億ステップ以上もの処理が行えるようになっています。また、そのコンピュータのものすごい計算処理能力を活用するための方法も進化してきていて、色んな事をさせる事ができるようになってきています。
今回のGPT-4などの言語モデルの進化も、コンピュータの進化の延長線上のものです。

日本が遅れていると言われているDXやIT化

今、仕事の生産性という事で良く言われている、日本が周回遅れだとも指摘されているDXなどの事は、この凄いコンピュータの計算処理能力を仕事にどんどん活用していきましょう、という事です。
ただ、それを行うためには、コンピュータに合わせて仕事のやり方を調整し変える必要があります。それが大変だという事で日本ではなかなかDXが進まないという事なんだと思います。(ただ、大変だとしても、やる価値があるほど、コンピュータの処理能力はとんでもないんですけどね。だって1秒間に10億回よ、人間が一生かかってもできない量の事を1秒でやってのけるのよ。)
ただ、言語モデルには、それを一変させる可能性を秘めていると思います。というのは、ユーザインターフェースとして自然言語は最強だからです。

大規模言語モデルは最強のユーザインタフェースになり得る

ユーザインターフェースとは、コンピュータと人間の間・界面(インターフェース)の事で、コンピュータに指令を出したり、コンピュータの処理結果を受け取ったりする、その操作性の事を言います。
マウスで画面をクリックしたり、コマンドをキーボードで入力したりして、人はコンピュータを操作していました。
それが、人と会話するかのように、コンピュータと言葉で会話する事で、コンピュータに色々な仕事をさせる事ができるのなら、多くの人にとってコンピュータに仕事をさせる敷居は非常に低くなる事でしょう。

なので、大規模言語モデルの普及は、遅れていた日本のDXを大幅に進める可能性はあると思っています。

人間の仕事が奪われる恐怖

と言っても、シンギュラリティうんぬんは大袈裟にしても、人間の仕事がコンピュータに奪われてなくなってしまうんじゃないか、と恐れる人はいるでしょう。
そんな人に、おすすめの本を紹介します。
https://www.amazon.co.jp/AI時代の勝者と敗者-トーマス・H・ダベンポート-ebook/dp/B01HCN7J6A/ref=sr_1_1?__mk_ja_JP=カタカナ&crid=2Y2KB39X9B8NX&keywords=AI時代の勝者と敗者-トーマス・H・ダベンポート&qid=1680187737&sprefix=ai時代の勝者と敗者-トーマス+h+ダベンポート%2Caps%2C135&sr=8-1www.amazon.co.jp
この本、この手の話題の時には必ず紹介しているんです。もう7年前の本ですが、基本的な考え方は今でも有効なはずです。AIに仕事を奪われるとかいう話をする際には、この本に書いている事は踏まえて論じた方が良いと思います。

詳細は本を読んで欲しいのですが、大雑把な概要を言うなら、AI時代には人は「AIを使った仕事」をするようになる、という事です。
これまで人間がやっていた事がAIがするようになり、人はそれを使って「より高度な事」をするようになる、という訳です。
でも、それはコンピュータの進歩の歴史の中でも見られた事で、昔は多くの人が算盤を使って膨大な計算を行っていたのが今ではコンピュータが一瞬で計算する、でも人のやる仕事がなくなった訳ではなく、コンピュータに計算させて人間はその計算結果を使って別の「より高度な仕事」をしています。その延長線上の事だ、という事です。