ai_math_runningのブログ

最近はAI関係の記事が多い予定です。一応G検定持ってる程度の知識はあります。

ランニング界のL.S.D.とは(麻薬じゃないよ)

今回は、ランニングの世界では一般的な用語であるL.S.D.について書いていきます。ランニング界隈ではもはや一般的な言葉なので、L.S.D.と聞いても誰も何も思わないのですが、知らない人が聞くと、ギョッとするかもしれません。でも、れっきとしたランニングの練習メニューの名前で、麻薬ではありません。
(もっとも、結構、脳内麻薬の出るメニューなので、L.S.D.でラリってる人はいるかもしれません。)

L.S.D.とは何か

L.S.D.とは、Long Slow Distanceの略で、「長い時間、ゆっくり、距離をたくさん走る練習メニュー」の事です。単に、ゆっくり長く走るってだけの、たわいのない練習メニューなのですが、この「ゆっくり」というのが、想像以上にゆっくりなのです。前にニコニコペースについて紹介しましたが、L.S.D.は、さらにゆっくりです。脈拍で言うと、ニコニコペースより10くらい低い負荷で走る事になります。
なので、ランニング初心者にとっては、走っただけでゆっくりでもこの脈拍を超えてしまうかもしれないです。そういう人にとっては、ちょっと速目に歩く事がL.S.D.の代わりになるかもしれないです。
それだけ低負荷の練習なので、全く辛くありません。刺激がなさすぎて飽きる、という人もいます。私も、普段はイヤホンとか走る時にはつけないのですが、L.S.D.の時だけはイヤホンで音楽聴きながら走ったりします。それくらい、汗もかかないようなメニューで、キツさが全くないので、いくらでも走ってられるというか、走っていると永遠に走り続ける事ができるような感覚になる事があります。もっともこれは究極で、なかなかこの境地には辿り着かないのですが。
また、ランニングって、ランニング・ハイみたいに、脳内麻薬が出てきやすいんですが、L.S.D.だと辛さがない中に脳内麻薬だけが出る状態なので、なんかラリってくるというか、多幸感につつまれる時すらあります。先の「永遠に走っていられる感覚」は、そういう状況なんだと思います。

L.S.D.の効用

そういう練習メニューがあるのはわかった、では、いったいどういう効果があるんだ、と思うかもしれません。L.S.D.には、次の5つの効用があると言われています。

長い距離を走る事で長い距離に耐えられる足を作る

いくらゆっくりで低負荷でも、長い距離を走るので、その距離分地面に着地して足を使っています。なので、L.S.D.をする事で、長い距離を走り切るための足の筋力をつける事ができます。なので、マラソンの準備期間(2ヶ月から3ヶ月前くらい)にやる事が多い練習メニューです。

脂肪燃焼効果

低負荷で長時間、有酸素運動をする事になるので、脂肪燃焼効果が期待できます。高負荷の運動では炭水化物が優先的に使われます。これは、酸素分子1つあたりに生み出すエネルギー量が炭水化物がダントツで多いからです。しかし、低負荷では必要な酸素量に余裕があるため、脂肪が使われやすくなる、と考えられています。

疲労の回復効果

サラリーマンランナーが練習メニューを組み立てる時、土曜日にインターバルなどの高負荷練習をして、日曜日にL.S.D.をする事が多いです。それは、L.S.D.には筋疲労の回復効果があるとされているからです。
これはどういう事かと言うと、高負荷の練習をして筋肉が強く損傷してしまった時、筋肉が固まってしまって老廃物が上手く排出されない場合があります。その時に、低負荷の刺激をある程度の時間、与える事で、脈拍が少し上がって血流が促進され、老廃物の回復がされやすくなる、という訳です。こういうのを「積極的休息」と言うそうですが、L.S.D.は低負荷の練習なので、そういう効果も期待できるという事でしょう。もっとも、L.S.D.で30キロとか走っちゃうと、それで筋疲労しそうですが。

眠ってる毛細血管を活性化

本当にそういう事があるのか、とにわかに信じがたい話なんですが、低負荷の運動を長時間すると、眠っている血管が活性化され、血液が通るようになるそうです。実際に低負荷の運動で休眠状態の毛細血管が活性化されることは確認されているらしく、L.S.D.などの低負荷運動で、そのような効果が期待できる、との事です。
なぜ、そういう事が起こるか、ですが、次のように考えられています。普段の生活では眠っている血管は使う必要がないので活性化されない。高負荷の運動では余裕がないので普段使ってる血管だけで血液を送ろうとする。しかし、低負荷の運動刺激を与え続けると、余裕はあるけど少しでも使える血管が増えた方が良い状態が続く事で、眠っている血管が刺激され、少しずつ使われるようになっていく、との事です。そうやって活性化された血管は、普段の生活や高負荷の運動でも使えるようになるそうです。
これは何を意味しているか、というと、つまり使える血管が増えるという事は、それだけ血液を隅々まで運ぶ届ける能力が高まる、という事で、つまり心肺機能を高める事になる、んだそうです。
なんか、キツい辛い練習を繰り返さないと心肺機能って鍛えられないように思えるかもしれないんですが、そうではなく、逆に、最も楽な、低負荷の練習メニューで心肺機能が鍛えられるんですって。やらない選択肢はないですよね。

(ニコニコペース、スロージョギングで持久力が上がる、というのも、多分、これが原因じゃないかと思います。つまり、低負荷運動による心肺機能の向上で、持久力が上がったんじゃないかと。ニコニコペースとL.S.D.と、どちらがより毛細血管活性化に効果的かは分からないですが、思想としては似た練習なので、あまり厳密に区別して考える必要はないと思います。)

ランニングフォームの改善

ゆっくり走る事でランニングフォームの改善に役立つ、と言われています。これは、「速い」動きの中では、なんとなくごまかせてしまうものが、ゆっくりにする事でごまかせなくなり、改善ポイントが浮き彫りになるとの事だそうです。
確かに、速く走る時は勢いで何とかなるんですが、ゆっくりだと勢いがないので、ちゃんとバランスよく身体を動かせないと、普通に走る事が難しいです。(なので、L.S.D.が苦手という人もいます。)
(あと、L.S.D.有害説を言う人もいます。フォームを崩してしまうって。個人的には、L.S.D.で崩れてしまうフォームなら、疲れてくるともっと崩れてしまうように思いますけども。)

以上、5つの効用があると言われています。思ってたより役立つ練習なんだな、というか、ひょっとして凄い練習なんじゃないか、と思うかもしれません。もちろん、良い練習法なので、これだけ広まって一般的になっているのですが、実はL.S.D.には一つ、致命的とも言える弱点があるのです。

L.S.D.の弱点

それは、「時間がかかる」という事です。どれくらいの時間、距離をやるかはそれぞれなんですが、マラソン用の足を作るなら30キロは走りたい所です。それを私ならキロ8分くらいで走るので、4時間ほどかかる事になるんです。
忙しい現代人にとって、それだけの時間を捻出するのは大変です。という意味で、「時間がかかる」というのが、ほぼ唯一の弱点と言えるでしょう。

いかがだったでしょうか。とりあえず、L.S.D.について、紹介したいことは一通り書いたと思います。まぁいきなり30キロとかじゃなくても、その人にとって長い時間、長い距離を走れば良いと思います。(でも、とりあえず普段のジョグよりは長めで。でないと「Distance」な練習じゃなくなっちゃうので。)

L.S.D.についての書籍
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この記事で引用した過去記事
ai-math-running.hatenablog.com
ai-math-running.hatenablog.com